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 その部分が再び上がってくると、歯ブラシとコップが上に乗っかっている。僕がそれで歯磨きを済ます間にベッドの上には制服が置かれている。制服はいつもアイロンを掛けてあってぴしりと音が出そうなほどだ。  僕が制服に着替えている間に、母さんは僕の机の上にかばんを用意してくれる。もちろん中には今日の授業の準備が万全にしてあって、おかげで僕は忘れ物にはトンと無縁だ。  髪を撫で付けて、もしも寝癖が残っていれば母さんが声をかけてくれる。かばんを持って玄関に行けばスニーカーがきちんと揃えて並べてあって、僕はそれを履くだけで良い。  母さんはそうして、僕が家を出るまで、きちんと学校に行けるまでいつも見ていてくれる。僕は楽だけれど、それに息苦しさを感じないと言ったら嘘かもしれない。 「じゃあ、いってきます」 「いってらしゃい」  母さんが声で僕を送り出してくれる。気が向けばあの銀色の触手で手を振ってくれることもあるけれど。母さんは僕があの触手を苦手なことを知っているからあまりそれはしない。  僕と母さんの1日はこうやって始まる。
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