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彼女は雨の降る曇り空を見上げた。彼女の顔にあった雫は、もう雨に紛れて分からない。
「でも、実は私…。
そんな未来、少し想像してたんだ」
彼女はすうっと軽く目を瞑る。一つ呼吸を置く。目を開ると水面を駆ける様に、トントンとステップで広場に出る。そこで手足を伸ばし、バレエのポーズをとって僕に言った。
「ねえ、撮ってもいいけど、雨だよ?
被写体は濡れてていいの?」
「花も女の子も、水が滴ってる方がより綺麗なんだ」
「うわぁ…、鳥肌立つわぁ。アンタのキザなセリフ、いつまで経っても慣れないや」
そう言って、彼女は踊り出した。
広場の外灯に明かりが灯る。雨はその光を受けてキラキラと降る。そんな雨を弾く彼女の腕は羽衣の様に伸びては揺らぐ。金色の長髪もいつにも増して流れては輝く。背筋は変わらず伸びている、綺麗に咲くためには真っ直ぐな茎が必要だから。
「カッコよく撮ってよね!」
彼女は咲く。
これからもっと。
たとえ、今日とは違う冷たく激しい雨が降る日があっても、どうか負けないでほしい。いや、負けないだろう。真っ直ぐ咲くんだ。だから、彼女は透き通る様に綺麗なんだ、僕は知ってる。
雨の舞台で踊る君
僕はシャッターを切る
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