雨の舞台

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今日は土曜日。 彼女がバレエ教室を終える時間を見計らいながら、カメラを持って周辺をうろつく。写真部の友達も誘ってみたが断られた。 むしろ、彼女を待ち伏せするのを止められた。ストーカーで捕まらないか?と、心配してくる。 だが、そんな心配は必要は無い、僕は中学生の頃にマラソン大会で陸上部を抜かしたことがある。走るのは得意なのだ。 それに、許可無く撮るつもりは無い。今まで何度も彼女のクラスに通っては直談判(じかだんぱん)している。 「写真コンテストに出す作品の被写体(ひしゃたい)になって欲しい」 けど、(いま)だに許可は貰えない。 同級生達からの冷たい視線を浴びながら、まるで大雨に当たる雑草の様に頭を下げているというのに。 彼女は僕に見向きもせず、水が流れる様にサラーっと去って行くのだ。良い返事どころか、普通に返事が無い。 バレエ教室が終わるまで、まだ1時間くらいはある。この辺りの景色に、惹かれるものは特に無い。道端の小さな花を探そうにも見当たらない。 もう春は来たはずなのに。 曇り空の切れ間、頼りなく光る太陽にレンズを向けていると、誰かが隣を通り過ぎる。一瞬見えた横顔に雫が見えた。まだ雨は降りだしてない、僕はすぐに彼女を呼び止めた。 「待って!雪花(せつか)
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