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その言葉に、彼女の唇がほんの少し開く。
彼女の瞳は次の言葉を待っている。
僕は目を逸らさずに、思いを伝えはじめる。
「小学生の時、毎日この公園でかけっこの勝負をしてたじゃん。僕は男でしかも足が速い。なのに雪花は勝つまで挑んで来ただろ?
最終的には走る練習を僕に頼んできたじゃん。気づいたら雪花は、いつも運動会で女子のリレー選手に選ばれてたよな。
だから知ってる。雪花は負けず嫌いで、何事にも努力をする女の子だって」
彼女はパァっと目を開く。花が咲いたみたいだ。その花を濡らすように、曇り空から雨が降り出した。僕は手でカメラを覆いながら、レンズを彼女に向け言った。
「僕が撮った写真をあげるから、芸能オーディションにでも出してみろよ。そんで、モデルか女優になるんだ。
雪花がこんな町で、萎れてしまうのは勿体ない。立派な街で華やかに咲き誇るべきだ。
君はこの町に居ていい存在では無い」
雨は思ってたより冷たい。でも、寒くは無い。流石の僕もさっきのセリフは少し緊張した、きっと熱くなってる耳は赤いのだろう。そんな僕を見て、彼女はクスクスと笑った。
「モデルか女優って…簡単に言うね。バカみたい」
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