雨の舞台

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雨の舞台

彼女は透き通っている。 例えば今日みたいなスーっと肌寒い日に予報通りの雨が降るとする。彼女がしっとりと濡らされ、長い睫毛の双眸がこちらを見つめる。想像力が掻き立てられる。 彼女はこの町に居ていい存在では無い。けど、もし、この町から彼女が消えるとしたら。僕はカメラで彼女を撮っているのだろう。 別に幽霊の話をしてるわけじゃ無い。 確かに最近の彼女は、枯れ尾花のようだ。 とても元気が無い。 だからってそんな言葉は似合わない、彼女は平凡な人間では無いのだから。 僕の家の近所にはバレエ教室がある。彼女はそこに通う同級生。同じ高校の男子なら、全員が彼女の名前を知っている。美人で有名だから。 色白い雪肌には、桜が咲いた様な唇がよく似合う。金色の長髪は水が流れているように冷涼に感じる。歩く姿は背筋が綺麗で百合のようなスタイルだ。 僕の褒め言葉に対して友達は、「キモい」とか「キザだ」とか罵るが、ちょっと賢くて変な大人もこのくらい盛大に彼女を褒める。だから僕の表現は至って普遍的だ。
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