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「ふーむ……どうやら、アンタの心に問題があるね。気になっているのに会えない人がいるだろう、ヒッヒッヒ」
何を想像したのか、占い師のおばさんは不気味に笑います。
気になっているのに会えない人……、誰のことでしょうか。昔の恋人でしょうか。連絡先がわからない友人のことでしょうか。それとも、憧れているあの俳優さんのことでしょうか。
実は白状しますと、一時期、本気で恋をした俳優さんがいました。どうにか近づいて、結婚できないものかと、いい大人がアブノーマルな妄想を膨らませたものです。
思いを巡らせていると、占い師のおばさんは汚れた水晶玉を持ち出しました。
「それが誰なのかなんて、私は知ったこっちゃないよ。でも、依頼人を前に放っておくわけにはいかない。いいかい、アンタの悩みは、会えないその人への想いに原因があるんだ。だから私にできることは、ただ一つ!」
そう言うと、占い師のおばさんは、汚れた水晶玉に向かって手を合わせました。そして、呪文のような言葉を口ずさみ始めたのです。
「カーリーズュ・スットワモザ・カーリーサセ……」
よく見れば、水晶玉には小さな傷が付いています。
そしておばさんの呪文に反応するように、その傷から光が漏れ始めました。
「じゃあ、行っておいで」
どこに? そんな私の疑問は、まばゆい光にかき消されました。
再び目を開けると、そこは何とも不思議な場所だったのです。
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