2 マユ

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2 マユ

 どういったらわかってもらえるでしょうか。  テレポーテーション?  タイムマシン?  私が知っている数少ないSFの知識をもってしても、上手に説明できません。  私が目を覚ました場所、そこは、日本でありながら、現代ではない。  日本語は通じるのに、話題が通じない。  どこかで見たような景色なのに、街を眺めると、スーパーファミコンが新発売だの、ティラミスありますだのとレトロなポスターが目につきます。  認めたくはありませんが、ここは紛れもなく1990年。28年も前の日本だったのです。  28年前と言えば、私が生まれる2年も前のこと。一体、何が起こったというのでしょう。そして、私はどうなってしまったのでしょう。  ひとしきり混乱しきった私は、あてもなく街をさまようことしかできません。  すると、店先にフリーマーケットを広げるカフェが目に入りました。  『神保町カフェ』と書かれたお店の前には、ぬいぐるみやブリキのおもちゃが並んでいます。  大して興味はなかったものの、その中に、現代では廃盤になってしまったシングルCDが置いてありました。  懐かしさも手伝って、思わずそのCDのジャケットを眺めていると、こちらを見つめる視線を感じます。  振り向いてみると、そこには私と同じぐらいの年齢の女性がいました。  初めて会ったのに、どこか懐かしさを持った人。  少し視線が交わっただけで、その人はなぜか私に話しかけてきました。
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