葛城圭という男

20/23
15391人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
『で、どうだった?』 「え。あ……どう、って」 葛城さんの方から本題を切り出していただいて、我に返る。そう、そうだ。釣書の話をしなければいけない。 「どうもこうもないです! なんなんですかあれ」 『何って……ああ、情報足りなかった? だけどそれ以上は、会ってお互いに知っていくのがいいと思ったんだけど』 「そういうことじゃないです! なんで釣書なんですか、違うでしょ! 縁談で生じる取引とか現状とか、そういうことを教えてくれるんじゃないんですか!?」 苛立ってつい声を荒げた。だけど、葛城さんは私が怒ってる本当の理由もわかっているんだろう。電話の向こうで含み笑いをしているのが聞こえてくる。 「……馬鹿にしてるんですか」 『違う違う、そうじゃないよ。明るくて覇気のある子だとは思ってたけど……気が強いよね』 「それはどうも、お好みじゃなかったらすみません」 『いや、全然。可愛いよ』 「かっ……」 言われ慣れない言葉にまた、絶句する。そして頭の中で警告音が鳴る。 だめだ。こんな、軽い口調で女に向かってさらりと『可愛い』なんて言える男は危険だ。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!