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そんな職人気質の、古い家だ。
厳しく躾られたかというと、実はそうでもない。ふたつ上に兄の康太がいるのでそこに期待が注がれ、私は比較的自由だった。
兄は店の跡継ぎとして、幼い頃から和菓子作りを仕込まれ、窮屈な育ち方をしたのじゃないだろうか。
だけど、私はそれが少し、羨ましかった。別に両親に疎まれはしないけれど、期待もされないのは子供でも感じる。
疎外感があり寂しくてしょうがなかった。
祖父は私が生まれた頃にはもう亡くなっていて、後を継いだ両親はいつも忙しそうで、私は祖母に育てられたようなものだ。学校から帰る私をちゃんと家で待っていてくれる。
祖母の手作りお菓子が、毎日の楽しみだった。
小学校高学年になると、教わりながら私も一緒にお菓子を作るようになりまたひとつ楽しみが増える。
兄が父から受け継いだような立派な腕はないけれど、祖母のおかげで和洋に関わらずお菓子作りは私の趣味となった。
お菓子は、私にとって自分を迎えてくれる『家』そのものだった。
祖母が居てくれたから、そう思えたのだ。
そんな祖母が四月下旬の今日、七十七歳、喜寿の誕生日を迎える。
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