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「いいや、土御門白臣君。君のような優秀な陰陽師が協力してくれるなら生徒達にとっても、とても良い勉強になるだろう。私も、君を教えていた頃を思い出して感慨深い」
有隆はにこやかにそう答えると、壇上で横に並ぶように白臣を誘導した。
『諸君らも十分承知の事だと思うが、紹介はしなくてはね。彼は土御門白臣。元は私の教え子で今では優秀な陰陽師だ。彼が呪の実演を手伝ってくれるようだ。彼と諸君らは年もさほど変わらない。私だけでなく、彼の呪もよく観察しなさい。良い手本になるだろう』
室内がざわめく中、有隆と白臣が壇上の両脇で向かい合わせの位置に移動する。その距離およそ十メートル。余裕のある笑みを浮かべる有隆と凶悪な目つきで睨みつける白臣。対照的な二人を生徒が息を飲んで見守る。有隆はマイクを使わず目の前の白臣に肉声で忠告する。
「一応注意しておくが。遠慮はいらないが、生徒を巻き込むような呪は避けてくれたまえよ?」
「あァ」
白臣が応じた直後、開いた掌の上に、膨大な熱が発生した。
焔。色は白。
燃焼の盛んな火は赤よりも白く発光する。温度は二千度といった所だろう。極度に空気が熱せられた事で、室内の空気に大きな対流が起こり、生徒の中から小さな悲鳴が散発する。
その悲鳴を合図に白臣が動く。白臣の足の裏が軽い爆発を起こした。その勢いを利用し、一瞬で間合いを一メートルに縮める。
「燃え散れ。有隆」
一閃。
発光する白の直線が斜めに奔る。有隆の右腰元から左の肩へ逆袈裟切り。斬りかかった少年の右手には炎熱で形成された細身の刀剣が握られていた。切り口は一瞬で白く炭化し、血液の流出すら許さない。笑みを浮かべて直立していた有隆はそのまま両断され、頭が繋がる上半身がごとりと地面に落ちる。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
女生徒の絶叫が響き渡った。目の前で人が両断されたのだから無理もない。室内を一気に恐怖が伝播していく。生徒達が一斉にパニックになる寸前、
「喚くな! 黙って見てろ雑魚ども!」
悲鳴を飲みこむ圧倒的な大声量に生徒達は思わず声を抑える。声が聞こえた壇上に注目すると、白臣が凶悪な顔で生徒達を睨んでいる。
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