bench time 第1章

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カオリさんは帰って来てからも静かだった。アキさんの様子が知りたかったが、とても聞ける感じではなかった。ユウさんも普通にしてたので前日に言っていた通り、大丈夫なんだと思い込むようにした。 その次の日にはアキさんからメールが来た。 (ゴメンね。心配かけちゃって。驚かしちゃったね。でも大した事から気にしないでね。) 大した内容の返事も、する事が出来なかった。 その次の日には店を開けたので、本当に大丈夫かな?ユウさんの言う通りそんなに心配する事では無いのかな?と、複雑な思いだった。 仕事も忙しく中々、アキさんの所に行けなかった。行けない事もないのだが、面と向かってアキさんに会ったら何て言ったらいいのか分からないと言うのが本音だった。 静かな日々。昼間の暑さが嘘の様な夜の冷たさ。秋に季節が変わり始めている事を実感する。ただ自分自身は相変わらず時が止まっている様。周りだけがゆっくりと季節を進めていた。 何日かした頃。夜に、アキさんが訪ねてきた。「迷惑掛けたお礼」と言って小袋を渡された。ちょっと照れくさそうなアキさんは他に何も言わず帰ってしまった。 小袋の中にはパンの様な物と包み紙に包まれた小さな何かだった。 包み紙を開けると、革で作られたキーホルダーだった。フクロウが彫られたアキさん手製のレザークラフト。裏には、自分の名前 [makoto] と刻印されてた。 パンの様な物は[プレッツェル]だった。     
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