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bench time 第1章
盆が過ぎ、朝晩の空気が冷たく感じてきたこの頃。しかし残暑のせいか昼間はまだ暑い日が続いた。これから秋にかけ、また仕事が忙しくなる。ただこの小さな街は、そんな昼の暑さも仕事の忙しさも関係ない様に静かで、落ち着いていて何時もの風景だった。
そんな中、ただ漠然と日々を過ごすだけ。
気分が高揚する事も無く、ただ時間が過ぎるだけ。それは自分だけでは無く…。
あの日。
アキさんが倒れた日。
もうあの日から4日程経つ。
何事も無かった様にアキさんは、今日から店を開けた。ユウさんも割と普通に過ごしている。
自分とカオリさんだけが、あの夜から時間が止まった感覚。
あの夜、アキさんとユウさんが居ない店[After-eve]の中で自分とカオリさんは、ただただ待っていた。
ユウさんからの連絡を。
カオリさんは俯きその場で、しゃがみ込んでいた。
自分も訳が分からない状態で、呆然と立ち尽くすだけ。
お互い会話も無かった。
パンの香りもアキさんの好きなコーヒーの香りも無い店内は、革の匂いだけが漂っていた。
2時間後位にユウさんから連絡が来た。
正直、そんなに時間が過ぎていたのかと…
カオリさんと居た店内での、時間の感覚がまるで無かった。
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