題1章.気になるあの子

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 気になってる人がいる。 登校中、電柱の背後に隠れながら、 私の様子をうかがっている『あの子』。  私が着るのと同じ制服、胸に結ばれたリボンの色から、 どうやら後輩の2年生らしい。 それ以上の事は知らないけれど。  身長は小柄、150cmはないだろう。 肩口に当たらない程度に切り揃えられた栗毛の髪。 スカートは長めで、いかにも大人しそうな 小動物の雰囲気を醸し出している。  特筆すべきは顔だ。とにかく可愛い。 丸みを帯びた大きな瞳に、整った鼻に小さな口。 もし男子に告白したら、面識がなくても 9割は快諾するだろう。 そんな美少女が、なぜか私を尾行しているのだ。  彼女の行動は一貫している。 近づき過ぎず、離れ過ぎず。 比較的歩くのが速い私を必死で追い掛けてくる。  振り向けば隠れる。でもチラ見えしてる。 本人はバレていないつもりなのか、 そこもちょっと気にはなる。  学校に着けば居なくなる。でもしばらくの間だけだ。 休み時間やお昼休み。視線を感じて振り向けば、 教室のドアの先、半身を隠した彼女が じっとこちらを見つめている。  気になる。気にはなるのだけれど、 彼女は話し掛ける隙を見せてはくれなかった。  こちらから近づこうとすれば逃げられる。 遠巻きに話し掛けても無視される。 写真を撮ろうとすれば隠れる。  いや本当に何者だ。何が目的で付き(まと)う。 というか監視ばかりしてるけど 学校生活大丈夫なのか? 多分友達居ないんじゃないか?  気にはなるけど、何も知らない。 すぐ近くにいつも居るのに、彼女の名前もわからない、 不思議で奇妙なストーカー。 私達の関係は、もう三か月目に突入していた。
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