第6章.狂気

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第6章.狂気

 完全に追い詰められた私は、 せめて彼女の意図を探る事にした。 敵なのか味方なのか。せめてそれだけでも知りたい。  例え、私の命を賭してでも。  たかかストーカーに大げさ過ぎる? そう思うなら、一度数か月にわたり 一人の人間に監視され続けてみて欲しい。 このままでは私は狂う。 ううん、もうかなり狂っているのだ。 ここらで決着をつけなければ、私の人生は破滅しかねない。  足早に家を出た。当然のように彼女は隠れており、 私の後ろをついてくる。  一時間ほど歩き続け、私はある地点で止まる。 人通りのない路地裏。なんとなく危ないから近づかないようにと、 学校で警告されている場所だ。  あくまでも遠巻きに眺める彼女に聞こえるように、 私は声を張り上げた。 「貴女が何者なのか知らないけど、  一つはっきりさせておきたいの」 「私に近づく目的は何?  悪意、敵意?それとも、好意?」 「まあ聞いても答えてくれないんだろうけどさ。  それならそれで、こっちにも考えがあるわ」  鞄からカッターを取り出した。 チキチキチキ、よく見えるようにゆっくり刃を押し出して、 さらには天に掲げて見せる。 「今からこれで私の腕を切り刻む。  貴女が邪魔するならやめるけどね」 「私に好意があるなら止めなさい。  そうじゃないなら……ま、  そこでぼけっと見てればいいわ」  少女の瞳が動揺に揺れる。 よし、効果はありそうだ。 刃を持つ右手をゆっくりと下ろし、 自らの左手に押し当てる。 「まあ、一回目はノーカンにしてあげる。  冗談と思われてるかもしれないし……ねっ!!!」  一思いに振り払う。鋭い痛みが脳を貫き、 左腕の前腕に一本の線が引かれた。 じわり、瞬く間に線は波になり、幾筋もの赤を垂らしていく。  少女がはっと息を呑み、その目が大きく見開かれた。
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