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「……次は本番。今度は本気で掻っ切るから。
それこそ骨が見えるくらいにね。
助けないと、私はとんでもない事になるわよ?」
もう一度。血にまみれたカッターを持ち空に掲げる。
ゆっくり、ゆっくりと高度を下げる。目的地は同じ左腕。
少女が飛び出してきた。
カッターの刃が左腕に当たる瞬間、
少女は私の右手に飛びつく。
そのままカッターを奪い取ると、
尻もちをついた私の上に馬乗りになった。
「っ……助けた、って事は。好意って事でいいのよね?」
少女は何も答えない。
ただ一つの頷きさえも私に返してはくれない。
でもその目には大粒の涙が溜まり、
唇はわなわなと震えている。
「……ま、いいわ。少なくとも私を
傷つけるのが目的じゃないのはわかったから」
「もう気にしない事にする。
好きなだけそばに居ればいいわ」
「ほら、もう帰るからカッター返して」
少女は言う事を聞かなかった。
きらきらと涙で輝く瞳を、まっすぐ私に向けながら。
ゆっくりと、チキチキチキ、
私から取り上げたカッターの刃を出して。
私の上に乗ったまま、右腕に刃を押し付けて。
そして、そのまま、一気に左手を薙ぎ払う。
「ちょっと!?」
彼女の右腕にも線が引かれ、血が溢れて滴り落ちる。
彼女は痛みに顔をしかめながらも、私の左手に指を絡めた。
ぼたり、ぼたりと血が垂れ落ちて、
私の血と混ざりあう。
ああ、わからない。この子がよくわからない。
何一つわからない事だらけだけど、
それでも一つわかった事がある。
「貴女。狂ってるのね」
少女はにこりと微笑むと、
血液にまみれた右腕を私の左腕にこすり付けて。
お互いの血を丹念に混ぜ合わせた。
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