彼との会話

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そろそろ梅雨も終わりかけ。怒涛の豪雨が続いている。テレビの前で、梅雨明け宣言を今か今かと待っている人間が、しびれを切らし始めるころ。 新入社員の彼は職場の空気にも慣れ、職場の空気も彼に慣れた。 相変わらず、何かのキャラクターもののボールペンを使い、付箋やメモ書きはアニマルだ。弁当は欠かさないで持ってきているし、最近は女子社員にせがまれて、レシピの伝授もしているらしい。 近頃は男性社員も彼の気遣いを認め始め、この課のアイドルは美人のあの人か、この男かという雰囲気にもなってきた。 非常に女性を感じさせる彼だが、写真で一枚撮った姿だけを見るなら、男にしか見えない。長身で、骨ばっていて、焦げ茶色の髪は短く清潔感もある。 スーツのしわは絶対ないし、ネクタイも一週間毎日変えてくる。 普通の女子より、女子をしていた。
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