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「久しぶりだな、お前ら」
奥から駆けてきたかつての仲間達に柔らかく言葉をかける。その誰もが最後に見た時よりもかなり痩せ細ってしまったようだが、表情は昔のままだった。
「ロベルト、待ってたよ。助けてくれてありがとうっ!」
囚われていた中では最も年下の少女が笑顔で告げる。彼女はあの日が訪れるほんの数週間前に準イデア加入したばかりの新人で、しかし実力者として次代のイデア候補と目されていたのだ。
ロベルトを含むイデア達も彼女には一目置いており、もう少し成長すれば将来的にはイデアに誘うつもりもあった。そんな少女の笑顔を見て、ロベルトは助けられて良かったと心底思った。
だがそこで、ふと思い出す。彼らのいた牢獄には普通の錠の他に魔法錠があったことを。
「魔法錠もあるって話だったけど、それは大丈夫だったのか?」
「ああ。この男、どうやら魔力を使いすぎたみたいでな。姿を誤魔化すために家にたくさんの魔法植物を置き、ライの頭脳を封じるために魔生体を維持し、その上でフィーマの召喚までしているんだ。たまらんだろうさ」
答えた男は、呆れたような目をクエルに向けた。
とりあえず魔法錠が解けたということは、この男は演技でも何でもなく気絶しているということに他ならない。これなら持ち運んでも問題ないだろう。
「ようやく外か……」
「いつぶりかしらね、自由の身なんてのは」
口々にそう呟く一門の面々を見ていたリリンは、何だか微笑ましい気持ちになった。
オールドマスター一門のことや、イデアのこと、ライのこと、エメルダのこと、さっきロベルトが言った「あいつ」とやらのこと、そして何よりロベルト自身のこと。リリンは、それらについてよく知らない。
それでも彼らの和気藹々とした雰囲気を見ていて、何となく分かったことが一つある。彼らは互いをとても信頼し合い、大切に思っているということ。
リリンにとって、それだけ分かっていれば十分だった。
「そろそろ行こう。外で待ってる奴らがいるからな」
クエルを担いだロベルトはそう言って、一同の先頭を歩き始めた。リリンも慌ててそれを追い、その後ろに門下生達が続く。
行きはあんなに殺伐としていたのに、帰りはひどく優しい空気に包まれていた。
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