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人がバタバタと倒れている階段と廊下を通り、ロベルト達は外に出た。夜風が木々をそよがせ、心地よい涼しさが皆の疲れた心を癒した。
「あ、おかえり~。よかった、お前らも無事だったんだ」
「おかえり、二人とも。その人達が一門の?」
少し先の茂みからとびっきりの笑顔で出てきたライとルヴォルスがゆるりと手を振った。心なしか非常に生き生きとしている。
「……何してた?」
ロベルトは胡乱げな視線を二人に向けた。リリンも怪しいと言いたそうな目をしている。他の面々は待機組の表情を見て納得したような顔をしていた。
一門のほとんどはルヴォルスのことはロベルトの今の仲間の剣士ということしか知らないが、直感で「ああ、あの二人は同類なんだなぁ」とぼんやり察知していた。
「ちょっとね? ね、ルヴォルス」
「うん、ちょっとだよね。ライ」
逆に不自然なくらいのとってもイイ笑顔である。だがロベルトとリリンが突っ込んだのはそこではなく――
「いつの間に名前呼びになったの、二人とも?」
「お前らこの短時間でよくそんなに仲良くなったな」
ここ、だった。この二人にとっては不自然な笑顔よりも後衛組が一門救出をしている間に急速に仲良くなっていたことの方が気になることであったのだ。
そんなちょっとズレた二人に、一門の者達は察するを越えて悟った。こいつら四人、ズレているという一点に置いては紛れもなく同類なのだ、と。
腹黒い剣士達と上手く釣り合いを取るには、多分ズレていないとダメなのだということは、捕らえられていた者達が外に出て一番最初に学んだことだった。
「はぁ……。まあ、何はともあれだ。ライ、こいつで間違いないな」
問いかけではなく断定で尋ねたロベルトに、ライも恨みを込めた微笑で返す。
「そうか。じゃあそろそろ起こそう」
そう、戦いは終わったが、作戦そのものはまだ終わっていない。ライの心臓にかけられた魔生体の呪いを解くのが最後にして最大のミッションなのだ。
幸いにも魔法錠の解除はクエルの生体反応と連動していたため免れたので、すでに少しばかり気分が悪いものの何とかなるだろう。
ロベルトがクエルの脇腹を容赦なく蹴り上げると、うっと呻き声が上がった。施設の外に集った一同は、弛緩した空気を引き締めた。
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