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牢獄の前で門下生達と別れた四人は、真っ暗な道をゆっくりと歩いていた。その足取りは様々な重荷から解放されたおかげで、弾むように軽い。
あまり騒がしくするとすでに就寝している住民達が起きてしまうので、作戦終了の高揚感とは裏腹に喋る声は静かだ。
「あー、やーっと終わったぁ……」
とライは心底嬉しそうに呟いた。ホッとした表情をしている。
「ああ、そうだな。これでお前も元通りか」
「とはいえ実力はさすがに落ちちゃってると思うけどね。それにあんまり長くおかしいままだったから、ちょっと残っちゃってるし」
「え、それ大丈夫?」
そう聞いたのはルヴォルスだ。夜道に剣の鞘がキラキラと反射している。ライはそれを見て目を細めると、楽しげにカラカラと笑う。
「だいじょーぶ。昔とちょっと口調が違うだけだし、そんなに気にするようなことじゃないよ」
リリンは暗い道の先をじっと見据えながら、四人の先頭を歩く。男の子達が仲睦まじく会話しているのを、実はとても楽しんでいた。
(何だか夢みたい、だなぁ。私が冒険者になって、こんなふうに皆と夜道を歩いてるなんて)
貴族に求婚された身として、下手な怪我をしないようにと腹が立つくらい蝶よ花よと優しく育てられてきた。
もちろん、それが愛ゆえであるのはよく理解している。リリンは一人っ子だから、嫁ぐならば少しでも良い相手をと両親が願うのは当然のことだ。
けれど、それはリリンに合わない生き方なのだ。
本音を言ってしまえば、家で礼儀作法を習っている時間なんかどうでもよかった。そんなことをしている暇があるなら、ロベルトやルヴォルスともっと一緒に遊びたかった。
だからこうして、求婚への答えも返さず夜逃げをするように冒険者になった。
最初に決めた時は怖かったけれど、今は心の底から思える。この選択は正しかったのだ。ロベルトがいて、ルヴォルスがいて、ライと出会って、オールドマスター一門のことを知って。
あのままエレパスにいたら絶対に知ることのできなかった世界が、ここにある。幸せな気持ちだ。
「リリン? どうかした?」
不思議そうな顔でルヴォルスが声をかけた。リリンはそれに、笑って返す。
「ううん、何でもなーい!」
(早く、この四人で旅をしたいな)
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