救出作戦、始動

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 宿に帰り着いた四人はそれから、あまりの疲労に死んだように眠った。ちなみに元々四人部屋に泊まっていたため、ライはそのまま空いていたベッドで眠ることに決まった。  そして作戦の翌日、朝日が昇った頃にロベルトとライは目を覚ました。どちらともなく外へ出る。 「おはよ、ロベルト」 「おはよう。相変わらず朝早いな」 「そう? ロベルトもでしょ」  清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んで、二人は空を見上げた。雲一つない快晴だ。今日はきっと、いい日になるだろう。 「二人が起きたら、ギルドに行こうか」 「あは、ボクもついに冒険者デビューだね! 楽しみだな」  機嫌良さそうな笑顔を見て、ロベルトは昔を思い出す。昔も、二人で朝早くに手合わせをしたものだ。剣士と魔法使いでは差が出てしまうが、経験としては今ではとても役立っている。  あの頃には、こうなることなど想像もしなかった。絶望的な状況下、全てが失われていく喪失感。何もできなかった無力感。  再びこの世に舞い戻る時になるまで、あの空白の中で悔やみ続けた。気が触れるほどの時間を空白に委ね、ようやくこちらに戻った頃には、時は過ぎすぎていた。  ロベルトが不老不死にしたのは、オールドマスター一門のイデア、そして実験のように試しがけされた準級の実力者やいわゆる親衛隊達のみだ。  だから今生き残っている門下生は、全てロベルトが魔法をかけた相手となる。それは――と――も同じこと。だから、今も生きている。――と、――は。  でも魔法を使いすぎたせいで、生まれ直す時に魔力がかなり減ってしまっていたのだ。その上でさらに大半を奪われてしまったので、昔に比べれば今の魔力量は雀の涙ほど。  だから、かけた魔法を解除するか、もしくは回数を消費することでロベルトの魔法の力が薄まると魔力が戻ってくる。  今の魔力量は自身にかけた分一回、エメルダの分一回、ライの分が一回だ。ちなみにエメルダは典型不老不死なのだが、あまり死にすぎると魔法は薄くなる。  ライの分は相棒特権で他より強めにかけていたので、一度で戻ってくる量も多かった。今なら、操天魔法二連発を撃っても気分は悪くならないだろう。 「あ、」  いつもの癖で眼鏡のブリッジを直そうとして、ふと思い出す。眼鏡は昨日壊れてしまった。 「ああ、眼鏡? そういえばかけてたね」 「ん。……まあないならないで仕方ないからいいけど」  少し不便ではあるが、別になければ死ぬというわけではない。壊したのは自分なので、自業自得でもある。  顔を見合わせて笑うと、二人は揃って宿の部屋に戻っていった。
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