四人の冒険者

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「ちょっと聞きたいんだけどさ、オールドマスター一門って何年前にあったものなんだい?」  唐突にそんなことを聞いたため門下生二人は少し驚いた様子だったが、すぐに顔を見合わせてごにょごにょと話始めた。何年前のことなのか確認しているのだろう。  そうして数秒後にはルヴォルスに向き直ってロベルトが答えた。 「大体、四百二十年くらい前だ」  その言葉に、ルヴォルスとリリンは目を見張った。四百年以上も前。  驚きに言葉を失う二人を見て、ロベルトとライは少し気まずそうな顔をした。ロベルトはともかく、ライは明確に四百年以上の歳月を過ごしてきているのだ。  それだけの時間、あの施設にいた門下生達は――そしてエメルダも――この田舎街に囚われ続けていたのだ。  想像してみると、それは……気の遠くなるような気持ちだった。 「それで? それがどうかした?」  問いかけたライに、ルヴォルスは気を取り直して説明する。 「解呪師の街には教会があるってリリンが言ったよね。その教会っていうのがさ、数百年の歴史があるとっても古い組織なんだ。だから、もしかしたら教会に一門についての情報がないかと思って」  教会には世界中の様々な出来事を記した記録書があると聞く。あくまでも可能性の話だが、そこにほんの一節でも何か情報があるのではないかと思ってのことだ。 「そんなものがあったのか……なるほど、数百年前って言うなら期待が持てるかもしれないな」  顔をほころばせるロベルトとライを横目に、リリンは立ち上がって自分の荷物を漁り始めた。  しばらく探したあと、何かを手に取り輪に戻った。その手には、ポケットサイズの歴史書がある。  ぱらぱらとページを捲ると、何ページ目かで手を止める。 「あ、あったよ」  開かれたページは六百年程前のことが書かれているところだった。リリンが示した真ん中辺りの行には、『教会設立』の文字がある。  教会は、六百年前から存在していた。つまり―― 「可能性、あるかもね」  嬉しそうな門下生二人をまるで保護者のように見つめながら、ルヴォルスとリリンは笑い合った。
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