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一門の情報があるかもしれないという希望を手に入れた四人は、意気揚々と再びギルドに出掛けた。今度は依頼を取るためだ。
ライは冒険者として依頼を受けるということをしたことがない。一門時代には個人的な依頼を受けたこともあるのだが、それとこれとは話が全く違うのだ。
皆で一緒に、なんて和気藹々するような依頼などは昔にはなかった。
大抵がどこの戦場で誰に加勢してほしいとか、誰を暗殺してほしいとか、そういう殺伐としたものばかりだった。
そのことを話すと、ロベルトはそういえばそうだったなと頷き、ルヴォルスとリリンは驚いていた。今の時代にはそんな危ない話は、表立って冒険者に流れてくることはないのだ。
表立って、であり一切ないわけではないのが恐ろしいところだ。
ギルドに着いた四人は様々な意味で奇異の視線を集めることになるのだが、もうよくあることと慣れきっているので特に気にしなかった。
「この前もここのボードだったけど、依頼ってもっと上のは受けられないの?」
「ランクが上がれば受けられるようになるけど、今の俺達はまだ一番下だからな」
「ふーん。……じゃあ、例えばなんだけどさ、ボクが今ギルドにいる人達全員倒したらランクって上がる?」
さらっととんでもないことを言ったライに周囲の視線が集まった。
すでに彼の実力を知っているロベルト達三人は「さあ、どうだろうな」「上がるんじゃない?」「逆に問題起こしたって言われそう」などと呑気に話している。
ライの爆弾発言に、周囲の冒険者達は殺気立った。そんな様子を見て、リリンは一つ疑問を抱いた。
「ライってさ、もしかして本気の実力、この街の人達に見せたことないの?」
もし街の人々が彼のことをよく知っていれば、こんなことを言われてもこんなに殺気立つことはないだろう。
なのにこんなに怒っているということは、ライの実力を知らないのではないかと思ったのだ。
「あー、そういえばないねぇ。ボクらは街の外に出られないし、田舎街にはそんな大事になるような事件なんて起きないし。人助けもしてたけど、それは地道なものだったよ」
なるほどそれなら納得だ。何も知らないならば、血気盛んな冒険者達は体格的に見れば華奢なライを舐めてかかるのも無理ないだろう。
それならば、本気を出してみるのも悪くない。
四人の心中は一致した。
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