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衝撃発言にざわめく中から、野太い声が冒険者達とロベルト達の間に割って入った。
「おいおい、ライさん。出てきて早々妙な真似は止してくれ。あんたやあんたの仲間には皆感謝してるが、ここには都でも通じるような実力者なんていないぞ?」
はっはっはと豪快に笑いながら言ったのは、ロベルト達が一番最初にギルドに来た時に話しかけてくれた古株の冒険者――デニスだった。
古株というからにはやはり、ライのことをよく知っているようだ。それに、彼は相手の実力をきちんと見抜いている。それだけの技量がある証拠だ。
「デニス! 久しぶりだね、元気そうで何よりだよ」
「あんたは……変わってないな」
「変わってたら逆に怖くない?」
二人の親しげな様子を見ると、昔からの知り合いらしい。
他の冒険者達はそれなりに実力のあるデニスから暗に『ライは都でも通用する実力者だ』と言われ、戸惑った反応を見せている。
デニスはこの街では冒険者のリーダー的存在だ。ロベルト達と同じように十代の頃から活動している人物であるから、信頼も厚い。
そんな彼からこの発言とあっては、ライの実力を認めざるをえない。
「まあ、あんたが何としても早く上がりたいっていうのなら止めないさ。ここにいる全員、倒せばいい。奥の修練場が空いているからそこを使えば何とかなるだろう」
意外と協力的なデニスに、ロベルト達は首をかしげる。ライの実力が分かっているのなら、こんなふざけた話は一蹴してしまえばいいのに、と。
「あの、何故僕らに協力を?」
ルヴォルスが思いきってそう聞く。するとデニスは照れ臭そうな表情で言った。
「何でってそりゃあ……俺はあの人を尊敬してるからな。あの人がいたから俺は冒険者になったんだ。結局Bランク止まりになっちまったが……それでも、あの人をバカにされるのは気分のいいモンじゃねぇ」
強い語調のデニスに、ロベルト達は好感を抱いた。自分達の仲間が尊敬されているのは、聞いているだけでも嬉しくなるものだ。
すでに冒険者をぞろぞろと引き連れ修練場に向かっているライを追いかけながら、三人は改めて、この街におけるオールドマスター一門の影響力を知ったのだった。
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