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ギルドの修練場には、元々ここで練習していた者も含めて数十人が集まっていた。話を聞いてただの野次馬になったり自分も参加したりして、ライと戦うのは最終的に五十人近い人数になった。
ロベルト達三人は修練場の端に寄って、その喧騒を眺めている。
「これ、どうするんだろうね」
「どうって?」
「一人一人倒すのか、一気に倒すのか」
「ああ。面倒だし一気でいいんじゃないか」
男子二人がのんきに喋っている傍らでは、リリンが男達に次々と声をかけられていた。本人はその全てをすげなく断っている。その際、「私と喋りたかったらライに勝ってね!」と言うのを忘れない。
おかげで、リリン目当てに参加する者もかなり増えてきていた。
「はーい、それじゃあボクと戦う人は集まってー!」
修練場の中央から大きな声が聞こえた。もちろんのことライである。ロベルト達のように端で仲間達と固まっていた者の多くがそちらに向かっていった。
その時何人かが「お前らは行かないのか」と聞いてきたが、緩く否定しておいた。
「これで全員? よし、じゃあルールを決めようか。ルールは……君達はボクから一太刀浴びたら負け、ボクはかすり傷でも負ったら負け。で、どう?」
他人が聞けばかなり舐め腐った発言である。案の定、冒険者達からはブーイングが出た。ライはそれをのほほんと聞き流している。
「まあまあ、お前ら。それだけ自信があるってことだろ? いいじゃねぇか」
そこにまたしても割って入ったのはデニスだ。彼の言に、冒険者達は渋々ながらその条件を呑んだ。その代わり全員でかかってボコボコにしてやろうという心積もりである。
「じゃあ全員一気に全力でかかってきてね。一瞬で終わったら詰まらないし、精々頑張って!」
イイ笑顔で言うライに、多くの冒険者が額に青筋を浮かべた。さすがイデアの頭脳、短気でプライドの高い者が多い冒険者の煽り方を心得ている。
ライがにこにこしながら剣を抜いた。
金属と金属が擦れる耳心地のいい音が完全に絶えるまでの数瞬が酷くゆっくりと過ぎていく。そして――
最後の音が鳴り止んだ瞬間、幾重もの人垣がライに突っ込んでいった。
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