四人の冒険者

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 思い思いの場所に座って、四人は暇な時間を過ごしていた。ロベルトは窓の外を微睡みつつ眺め、ルヴォルスは剣を磨き、リリンは歴史書を流し読み、ライはロベルトの膝を枕にすでに爆睡している。  川をそのまま引っくり返したような雨は滝のように流れ続けている。 「ねぇロベルト、何かイデアの話してくれない?」  リリンは退屈さをどうにかしようと、そんなことを言う。するとルヴォルスも、 「いいねそれ。僕も聞きたい」  と乗っかった。  面倒臭がりなロベルトは渋るような仕草を見せたが、どうせこんなに退屈ならそれもアリかと思い直す。何よりイデア、ひいてはオールドマスター一門の知識はあるにこしたことはない。  イデアには性格に難がある人物が多い。予備知識は必要だろう。 「まあいいけど……ただただイデアが変人って話になると思うぞ」 「いやそれはもう分かりきってるから」  ルヴォルスにすっぱりと言われてしまった。まだ知っているイデアは三人だけだが、エメルダはともかくロベルトとライは変わっている。いまだに膝枕されて爆睡中のライは、特に。  相棒と仲良しというのはもちろん悪いことではない。ないが……距離が近い。と、ついそう思わずにはいられなかった。 「ライ、起きろ。イデアの話聞きたいって」 「……ん、分かった……」  大きく欠伸をして、ライが起き上がる。 「よし、じゃあ聞かせてよ!」  リリンは満面の笑みで楽しそうだ。四人でいつものように床に丸くなって座ると、ロベルトとライは目を見合わせる。 「何から話そう」 「話題には事欠かないからね、ボク達は。じゃあ基本から行こうか?」 「あ。あー、うん。そういえばその辺のことは話してなかった」 「ちゃんと話しとこ? これ必須事項だからね?」  いつとのごとく、漫才のようなペースでポンポンと話が進む。二人で喋っている時はライが会話を回しているが、それが綺麗にハマっていた。  ロベルトとライのこの様子を見ると、ルヴォルス達は彼らが遠い昔からの相棒だったのだということを強く感じさせられる。 「それじゃあまずは基本の基本、十三人のイデアについて」  ロベルトが機嫌良さそうに口を開く。そして―― 「かつてボク達イデアは、十三人『十四席』で構成された最強の一団だった」  ライがいきなり、おかしな発言をした。 「十三人で、十四席……?」 「どういうこと?」  普通、十三人と言われれば席も十三のはずだ。それが十四。席が一つ余ってしまう。もしかして欠番でもあったのだろうか。  混乱する二人だったが、イデアである本人達もそうなることは予想していた。十三人十四席のことを発表された時は自分達も相当に驚いたからだ。 「リリンには話したけど、俺達イデアは自分の得意分野以外に違う武器も扱えるようになる必要があるんだ」 「でもそれは最初からそうだった訳じゃなくてね、とある一人のメンバーがイデア入りしてから決まったことなんだよ。そいつが、解呪師の街にいるかもしれない人物」 「矛盾する二つの武器を持った『矛盾術師』。あの日、あの惨劇とその後の地獄から、唯一『生きて』逃れた男だ」  淡々と、平然と、衝撃が連続する。まさかここで次の街の話が出るとは思わなかったし、その人が生き残りだったとも思わなかった。  どうにか言われたことを飲み込んだ二人は、まだ若干混乱を残しつつ続きを聞く姿勢を見せた。 「そもそもイデアは強いやつ、特殊技能があるやつが任命されるもので、当然だけど入れ替わることもある。弱くなれば番号が下がることもあるし」 「一応、番号が若い方が強いからね。普段は意識しないけど、番号が上の人に命令されたら基本的に聞くようにはなってるんだ」 「じゃあ、ライはロベルトに命令できるってこと?」  ルヴォルスが首をかしげながら問いかける。ライはそれに頷いて、 「もちろんできるよ。でも滅多なことではやらない。相棒に命令するなんて嫌だからね」  と答える。 「この辺を説明するには矛盾のやつの話をしないといけないけど……まあそれは追々ってことで。他に何か聞きたいことはないか?」  少々強引に話題を切り替え、ロベルトは二人に質問を促した。 「イデアのことっていうか二人のことなんだけど、さっき膝枕してたじゃない? あれ、ロベルト気にならないの?」 「あー、確かに。人の頭って意外と重いからね。僕も気になるかも」  斜め方向からの切り込みにロベルトは困ったような顔をする。 「うーん……あれはライの問題だからな」 「ボク、ちょっと不眠症になっちゃうときがあるんだ。そのときにエメルダから、人肌があれば眠れるって聞いて。ロベルトとは昔から同室だったしよく一緒に寝てたんだよ」  照れ臭そうに説明すると、二人は納得したようだ。  実を言うとルヴォルスも、ごくたまに不眠症に陥ることがある。貴族として何か重大な式に出席する前などだ。そういうときに人が近くにいると安心して眠れるのはよく分かる。  二人は興が乗ってきたのか、雨の音を振り払うように次の質問を投げかけた。
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