雨が上がって、幕も上がる

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 仲間に呼ばれ、「ほら行くぞ」と言って走り出した相棒に笑顔で返したライは、だが内心―― (馬鹿だなぁ、ロベルトは) 薄暗く、嗤っていた。 (気配を記憶? 無理無理)  できるわけないじゃん、と冷めきった心中で思う。  完全に嘘というわけではないが、ほぼほぼ嘘である。  魔力を持たないから、魔道具を起動できない。そりゃそうだ。そんなことゴブリンでも分かる。だがそれなら、借りればいい。どこか適当なところから持ってきて使うだけだ。 (悪いけど、使わせてもらうからね。これも作戦のうちなんだし)  作戦。そう言い訳じみたことをぐるぐる考えながら、ライは仲間達に追い付く。  自分達に知らされていないもう一つの作戦があるとすらも知らない三人。このお祭り騒ぎの裏で何が起き、起こしたか一切知らない三人。  余計な奸計だと分かっているが、それでもライには自分の思考を止める術がなかった。  よくできすぎた頭脳が弾き出した、裏で起き、起こしたものが意味すること。それはライにとっては看過できない問題なのだ。  他の人からすれば一笑に付されるであろう案件は、しかし、彼に限っては決定的かつ致命的な有効打でもあった。 (作戦のうちだ、作戦のうち。仕方ない。その方がきっと上手くいく。全部終わったらちゃんと話す。大丈夫……それまでには、決められる……)  頭の中で幾度となく蘇る声を軽く(かぶり)を振って追い払いながら、ライは三人とともに楽しげに歩き出した。
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