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その後は特に何事もなく、喧騒を楽しみ作戦地点を下見した。雨の間に溜まりに溜まった鬱憤を晴らすべく盛大にはしゃぎまくって大満足した一行は、夜の帳が下りる頃に宿に帰った。
一階にある食堂も賑わっていて、屋台で食事を済ませてきてよかったと四人ともが思う。この盛況では席に座れないからだ。中にはすでに立ち食いしている冒険者の姿もある。
すっかり宴会が始まっている食堂をあとにして部屋に戻った四人は遊び疲れに眠りたくなったものの、先にやるべきことがある、と気を取り直した。
「……とりあえず今日は来なかったな、ハインリヒ」
「夜中に襲撃してくる可能性はあるけどね」
「どこから来てるかにもよるんじゃない? それこそ王都や帝都だったら相当遠いよ」
「でもイデアじゃん。ロベルトも昔は瞬間移動できたんだし……」
「あー、そういえばそんなこと言ってたね」
もう定番となった車座になって座る。そこにはもちろん、フィーマの姿もあった。
明日には一度外に出て、ルヴォルスが契約したという体で街の中での活動ができるようにする。
フィーマほどの高位の精霊がその辺でふらふらしているわけもないのだが、そこはゴリ押しで何とかする所存だ。
どうせ精霊の視える人間なんてこの街には(多分)ルヴォルスしかいないのだ。多少おかしくたって、「精霊だからそんなこともある」と言えばどうにかなるはずだ。
エメルダもフィーマの自由行動を許可しているので、エメルダ以上の権力者が出てこない限りは大丈夫だ。
ギルドマスター以上となれば貴族やら領主やらとなるわけだが、いくら高位とはいえ結局は精霊一人なのだ。そうとやかく言われることはないだろう。
「ハインリヒは瞬間移動とかはできなかった……と思う」
「暗殺者だから速さはあるよね。ボクよりかなり速かったんじゃない?」
「五分だろ。普通の時はハインリヒの方が速いけど戦闘になればライが上」
「あれ、そんなもんだった?」
ハインリヒに瞬間移動の類いのスキルはないのでもうしばらくは大丈夫だろう、ということで話はまとまり、やがて雑談へと路線は変わっていった。
だがそれも数分と続かず、一日中遊び回った四人は遊び疲れで眠気が勝ってすぐに床に就いた。
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