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鐘が鳴るちょうど五分前に正門に着いた二人は、そこで待つ少女の姿に目を止めた。ロベルトの幼馴染み、リリンだ。
ふわり。振り向くとともにふくれっ面を見せる。空に溶け込むような淡い水色が広がり、髪と同じ色の瞳に少し拗ねたような感情が見える。
「あ、二人とも! 遅いよ~!」
「悪いな、丘に行ってた」
「それを呼びに行ってた」
悪いと言いつつ悪びれた様子のないロベルトと、苦笑するルヴォルス。いつも通りの光景だった。
待ち合わせをして、ロベルトが時間になっても現れず、ルヴォルスがそれを呼びに行き、リリンが待ち合わせ場所で待っている。三人が仲良くなってからずっと変わらないことの一つだ。
軽口を叩きあっていると、一日の始まりと開門を告げる鐘が大きく鳴り響いた。出発の時間だ。
「じゃあ、誰にも見つからないうちにさっさと行くか」
「何か夜逃げでもしてるみたいだ」
「夜逃げじゃなくて冒険への第一歩だけどね」
重く錆び付いた音を立てながら開いていく門。それが全員一緒に潜れるくらいに開いたとき、
「せーのっ」
とん。と、三人同時に足を踏み出した。
目の前には青い空と草原がどこまでも続いていた。遥か遠くには山らしき影が霞んで見える。
三人は振り返らずにしばらく進んで、五メートルほど離れたところで立ち止まった。そしてくるりと町の方へと向いて、声を揃える。
「今までお世話になりました。行ってきます」
まず目指すのは隣町。この町は辺境とはまた違う最果てに近い場所にある町だ。隣町でも結構な距離がある。
しかしちょっと遠いくらいで諦めるわけもない。彼らは冒険者になったのだから、これから先、とんでもない時間と距離を旅に捧げることになるのだ。
「さて、やることもやったし……街道方向に向かいましょうか」
「そうだね。まずはそこに着かなきゃ始まらない。昼までに着くかな?」
「着くだろ。街道沿いなら親父と行ったこともあるし。あとはモンスター次第だな。出なけりゃいいけど」
「冒険者にしては消極的じゃない? あ、方向は北西だよね」
「ええ。さ、行きましょ!」
三人は連れ立って、最初の旅へと歩き出した。
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