操天術は魔法である

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 北西に進路を取った三人は、街道を目指してあるいていた。国が作ったいわゆる国道街道は町から離れていて、そこまで行くのに時間がかかるのだ。  初めての旅だからか三人の会話が途切れることはない。朝食代わりのパンを食べながらのんびりと話している。  歩きながら食べるのは行儀の悪いことだが、立ち止まって食べている暇はない。今はまだ早朝だからいいものの、昼を過ぎればモンスターランク最下層辺りのモンスターが活動を始める。  これが高ランクのモンスターであれば主な活動時間は夜なのだが、低ランクモンスターにはそもそも時間の概念がない。もちろん活性化するのは夜なのだが。  まあとにかく、三人は旅慣れない者の集まりだ。低ランクとはいえ野生のモンスターとの戦闘の経験はない。街の冒険者たちから聞くばかりだった。  実戦経験のない新米冒険者は、例え相手が弱くとも数に押されて負けてしまうこともあるのだ。一般的に、ゴブリンでも自パーティの人数の三倍いたら危ないと言われている。ロベルト達は三人パーティなので九匹いたら危ないことになる。  街道周辺ならば、基本的にモンスターは寄ってこない。そこが明確に「人の道」であるからだ。冒険者達も通る街道は、モンスターにとっての墓場に近いイメージなのである。 「まだ時間はあるし、太陽が真上に登る一時間前には街道に着くようにしよう」  ロベルトが言うと、二人も了承の返事を返した。  さて、それからしばらく。三人は、早速危険に直面していた。モンスターではない。むしろそっちならどれだけ良かっただろう。  初遭遇の敵は……人、だった。つまり盗賊である。  法律で決められた年齢的には一応成人に入るのだが、一般認識としては二十歳からが大人だと思われている。  まだ十六になったばかりの子ども三人の旅とくれば狙われて当然だ。まさかこんなに早く出会うことになるとは誰も思っていなかったが。 「ガキども、殺されたくなかったら金目のモン置いてけや」 「お頭、あの女、相当いい顔してやがる。ありゃ高く売れますぜ」  などという、大変ありがちでお決まりの台詞をロベルト達に向けていた。 「……全く、面倒臭い」  ぼそりと呟いたロベルトは一歩前に出る。 「あ、やる? じゃあ僕も……」 「いや、いい。一人でやれる」  手伝おうとするルヴォルスを制して、一人、魔法を発動するための杖を強く握りしめる。 (……力試しだ。今の俺が、どこまでやれるか)  下卑た笑いを浮かべる盗賊たちを睨み付け、細く息を吸い込んだ。
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