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それから約一分後。三人は何事もなかったかのように旅を再開していた。ルヴォルスとリリンはもう少し休んだ方がいいと言ったのだが、当の本人が大丈夫だと強情だったのだ。
「次からは眼鏡外すし心配するなよ。外せば二発くらいなら余裕だから」
「そうは言っても、本当に心配したんだから! ねぇルヴォルス」
「本当だよ。下手に無理されて魔力枯渇なんて笑えないし。二人のことはローレンスに紹介する予定なんだから、それまでは倒れないでよ?」
「はいはい、分かってるって」
隣の街にそいつがいたらだけどな、とはロベルトは言わなかった。
ルヴォルスには、一卵性の双子の弟がいる。それがローレンスだ。
性格はあまり似ていなかったが、容姿はそれはもうよく似ていた。同一人物かと見間違うほどで、両親にも見分けがつかなかったらしい。彼はいつもルヴォルスにくっついて遊び回っていた……と、二人は聞いている。だが、真偽は分からない。
長年付き合いのある二人だが、いまだに、ルヴォルスの弟に会ったことがない。
ローレンスは、幼い時に誘拐されてしまったのだ。
兄弟で遊んでいた時に突然黒いフードを被った人物がやって来て、弟を連れ去ってしまったのだと言う。しかもその時、黒フードの人物はルヴォルスに呪いをかけた。術者本人にしか解けない呪術魔法を。
その影響でルヴォルスの白目は常に薄黒い靄がかかって濁っている。目に影響が出るのは呪術系魔法の被術者特有のものだ。
三人が冒険者になった理由の一端には、その弟探しと解呪も含まれている。
だがローレンスが隣街にいる可能性は、万に一つもない。隣街ならば大人たちがとっくに見つけているはずなのだ。だから、いるとすれば都か……最悪、他の国だと目星を付けている。
ずっと昔に誘拐された弟を今でも探し続けるルヴォルスのためにも、ローレンスを見つけて術者に解呪させるまでは絶対に旅をやめないと誓ったのだ。
「あ、街道あったよ!」
「……見えない。リリン、どこだ?」
「僕らはリリンほど目が良くないからね。特に僕は視界がうるさいし」
「あれ、まだ見えない? この先、まーっすぐ行けばすぐだよ」
「よし、昼までに街道に着けるな」
目のいいリリンが街道を見つけたことで、三人の足取りは軽くなった。
それから少しすると、ロベルトとルヴォルスも街道を見つけられるくらいの距離に入ったので、一同は最初の目的道へ無事に着いたことを喜びあった。
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