操天術は魔法である

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 ライが四人を連れて行ったのは、鉄の塊のような武骨な印象の牢獄だった。もちろん、ここにライ達が囚われているわけではない。 「ここ? 何でまた……」 「知り合いがいるんだ。すぐに戻ってくるから、少し待ってて」  そう言って、建物の中に消えていった。残された三人は、手持ち無沙汰に牢獄から少し離れたところでぼんやりと立っている。  やがてルヴォルスが口を開いた。 「ねぇ、ロベルト」 「何だ?」 「ずっと気になってたんだけどさ、転生ってどんな感じなの?」 「あー、確かに! 気になる!」  リリンもそれに乗っかり、二人は好奇心に満ちた目でロベルトを見つめる。それにロベルトはどうせ暇だし、と答えることにした。 「……えっとな、転生転生って言うけど転生とは少し違うんだ」 「違う?」 「ああ。転生っていうのは生まれ変わることで、基本的に前の自分とは姿形も違うし前世の記憶みたいなのも滅多に持ってないだろ。でも俺は、年齢以外はあの頃のままなんだよ。だから俺はずっと『生まれ直し』って言ってるんだ。普通の転生とは違って、俺の場合は本当に人生を『やり直して』るんだからな」  いわゆる強くてニューゲーム、二周目なのである。一周目の人生をクリア――といってもバッドエンドだったが――したので、二周目を始めた、というわけだ。今度こそハッピーエンドで終わるために。  よって便宜上転生と呼んでいるだけで、その本質は全く違っているのだ。ニューゲームというよりリフレインの感が少し強い気もするが。 「じゃあ、その生まれ直しにはどれくらいかかるの?」 「基本的にはランダムだな。俺と同じように繰り返す、やり直す系統の不老不死は死んでるのに死んでないって感じだから魂だけの状態でも何年だって存在し続けることはできるから」 「魔法って本当に何でもありなんだ……」 「昔の話だよ。今はそんなの無理だ。ルヴォルスやリリンにかけても、絶対に失敗する」  そんなことを話していると、牢獄からライが現れた。上機嫌に鼻歌を歌っているが、狂人モードではないらしい。  四人は再び、作戦に向かって足を進めた。  作戦開始まで、あと一時間。
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