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まず最初の一団が各々の武器を振り上げて迫る。すっかり人に囲まれて、ライの姿は見えなくなってしまった。
仕方がないので三人は鍛練の見学用に作られたスペースに登った。ここにはすでに、野次馬に徹している者が数多くいる。
「さてと、骨のありそうなやつは何人くらいいるかな」
「ロベルトはライが負けるとは思ってないんだ?」
「当然だろ。俺の相棒があの程度の技量、人数に負けるわけがない」
リリンの問いかけに、ロベルトは自慢げに頷く。
すると周囲の野次馬達が一斉に三人を見た。あの騒ぎの中心にいる男の相棒だと言っているのだから当然だろう。
野次馬達は話しかけたそうにしている者もいるが、三人はそんな視線など歯牙にもかけず喋り続ける。
「あの程度ってことは、もっと凄い人とも戦ったんだよね。どの時が一番凄かった?」
こう聞いたのはルヴォルスだ。同じ剣士としてそういう話を聞きたがるのは当たり前と言えるだろう。
「そうだな……一番凄かったって言うと、やっぱり帝国戦争かな。戦闘要員総出だったし」
嬉々として話し始めたロベルトは、二人にだけ聞こえるように声を潜めて続けた。
「俺はいつも通りライと組んでたんだけど、鳥肌が立つくらい格好良かったよ。今でいうAランク冒険者級が五百人近かったんだけど、あいつ一人で半分以上倒したんだ」
その言葉に二人は息を呑んだ。Aランク級約五百人を、たった二人で?
それは正しく、偉業と呼んで差し支えのないものである。
かつてのイデアはそこまでの力があったのかと思うと、恐ろしい限りだ。
それに、帝国、というとつまりこの国ではないか。彼らは帝国にも喧嘩を売っていたのか。かつての帝国国民がどれだけいたのかは知らないが、二人に対して五百人となると、総力戦だったのでは?
そんな大物達が同じパーティーにいるとなると、心強いことこの上ない。
「これはあとで聞いた話なんだけど、俺達、頑張りすぎて完全に意識トリップしてたらしい。大気中の魔力まで絞り尽くしたのに魔法使ったり死んでるレベルの怪我なのに動き回ったりしてたからな」
若気の至りだと言いたげに苦笑するロベルトに、二人は軽くゾッとした。魔力残ってないのに魔法使って死亡級の重態なのに戦ってるって、それはもう超人では。
あまりに規格外すぎるイデア達に、残りの人達もこんななのかと思うと何でもできるような気になってきた。
二人は顔を見合わせて、寒々しい笑い声でもってロベルトに返した。
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