長雨、修行の日々

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長雨、修行の日々

「――とまあ、コンビでの初戦闘はこんな感じだった」  長い長い話を、ロベルトはそう結んだ。  外では、雨が降っている。 「懐かしい話だったねぇ。そういえば、あれ以来魔偽竜とは会ってすらないや」 「そう言われてみるとそうだったな。襲撃されたときもいなかったし」  どこか遠くを見つめながら話すロベルトとライ。今の話は、二人がまだイデアの新人であった頃のものだ。もう時代から忘れ去られた、過去の話。  暇だからと長話をせがんだルヴォルスとリリンは話のスケールもそうだが、一番は『魔偽竜』という単語が出てきたことに驚いていた。  オールドマスター一門やイデアのことは全く伝わっていなかったが、魔偽竜の存在そのものは今の時代にまで脈々と語り継がれていた。  曰く、『何百年も昔に神々と戦った』兵器だと。  そんなものおとぎ話だとまるっきり信じていなかったルヴォルスとリリンだが、彼らの過去を聞いて思う。  今に伝えられている『神々』というのは、オールドマスター一門、その中でも特にイデアを指しているのではないか、と。  そうだとすれば納得もできる。確かにこの二人の強さは異次元に達していると言ってもいいほどだ。全盛期はもっと強かったらしいので、それこそ『神』と伝えられてもおかしくはない……ような気がする。  もしくは、イデアの生き残りが神という形に隠して伝えたのか。それも考えられるだろう。 「ねえ、二人とも」  ルヴォルスが声をかけた。 「あのさ、僕たちも魔偽竜のこと知ってるんだけど……その伝説の中にね、『神々と戦った』ってあるんだ。これはもしかして、イデアのことじゃない?」  イデアの情報は現在限りなく少ない。ロベルト、ライ、エメルダの誰もが情報を持っていないからだ。特に他のメンバーに関するものは。  だから、もし『神々』がイデアを示すなら、伝説関連の資料にもっと記述があるかもしれない。手がかりは多ければ多いほどいいのだ。  ルヴォルスの言葉を聞いたロベルトとライは目から鱗とばかりに一瞬ぽかんとしていたが、顔を見合わせて頷く。 「可能性はあるね。確か、民間伝承について調べてる人いたし」 「ああ、あの人。雨が止んだら図書館に行くか」  長雨が降る一日目は、こうしてすぎていった。
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