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「最後の3枚ね、紫陽花と修一を一緒に撮ったの。おかしいよね……。現像した人、なんかミスしたのかな。こんなのって、無いよね」
正晴さんは何も言わず、静かに写真を見つめていた。
その沈黙こそ、答えだった。
「ずっと話、してたのに。いいカメラだねって。いっぱい撮ったらいいよって。ずっと修一と話してたのに。なんで何も映ってないの? ねえなんで?」
もうわかってる。正晴さんに訊いたってどうしようもない事。
おかしいのは私なんだ。今朝から、いや、ここ最近ずっと。おかしいのは私の方だった。けれど認めたくなんかなかった。もう、修一がこの世界のどこにもいないなんて事。
私はテーブルの上の写真を手で叩き落として、大声をあげた。
今朝までは忘れられていたのに。何故またこんなことを思い出してしまったのか。
このまま一生思い出せずにいたかった。
修一は死んでしまった。1か月前、バイク事故に巻き込まれ、突然、この世からいなくなった。
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