雨だ。雨をよこせ。さもなくば、血であがなえ!

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「二重三重の検問。びくともしないバリケード、くわえて厳重なボディチェックとバイオセンサーによる徹底的なスキャン。それでも犯人は現れた」 苦み走った顔の老刑事が現場見取り図にバツ印を書き加えていく。標的とされた治水権管理庁の周辺は文字通り水も漏らさぬ警戒網が敷かれているが、それを嘲笑うかのようにテロ攻撃が相次いだ。 装備を一新して背水の陣で臨んだものの、あろうことか今度は庁舎の目と鼻の先で事件が起きた。無辜の血が流され、貴重な水分が失われた。 「いったい、どこから湧いたんだ! ああっ?!」 ボードを殴った刑事はいちいち感情的になれるほど若かった。そのみずみずしさを老刑事は懐かしく思う。そして、かつて先輩から授かった言葉を繰り返した。 「もう一度、根本から洗い直すんだ。徹底的にだ」 「4回もやったじゃないすか。そしてこのザマですよ」 若造は口角泡を飛ばして訴える。 「じゃあ、水野。お前の目が曇っているんだ。顔を洗ってこい」 老刑事は節水と書かれたドアを指した。 「流水許可は出していただけるんでしょうね?」 「俺の枠を使え。咎められたら沢原の命令だと言え」 そう言ってやると水野は扉の向こうへ消えた。 沢原は脂ぎった白髪を掻きむしった。窓の外はカラッとした快晴だ。     
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