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こっちも同じだ。話せるだけのエネルギーはあったのか。
不思議なもので。声を出したら少しだけ意識がはっきりした。最後の花火かも知れないのだけれど。
だから。
視界の中で、彼の目が、ぎらぎらと血走っているのが見えて。
──安心する。
「最終処分セェール、ですよー」
のんきに伝えておく。
「もうここから数分が多分ラストチャァーンス」
ああもう無理かな。そろそろ。
と思った時に、ひどく熱い吐息が近づいて来るのを感じた。視界はもうダメ。でも耳と触感はもう少し生きてる。だから安堵する。きっと。
やっとお役目を果たせる。果たして、死ねる。元々、果たしたら死ぬしかなかった命だから、それはいいんだけど。
「ごめんっ……ごめん……なさい……」
泣く必要はないんだ。だって君がそうしたいと言ってくれたから。
そうしたいと言ってくれなかったら。きっと死後「先代」たちからタコ殴りにされるに違いなかったのだ。
仕事を放棄して。次世代も残さずに。全部放り投げて逃げ出したと誹られるに違いなかったのだ。
だから。
──これでいい。
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