episode.1 再会

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 屋上。階段の塔屋の上、給水塔がある。その周辺に空いた隙間に今僕は体を伸ばしている。元々は座っていたのだけれど、尻の下から物音が聞こえて来て慌ててうつ伏せた所だ。  がちゃがちゃ鍵の音がして、扉が開いた。足音。注意深く端から目を覗かせると、体格のいい男が2人と小柄な女が1人。 「……意外と見えねえな」  男の声。 「だからそー言ったと思いますけど」  女が答える。  男は双眼鏡を手に周りを見回している。主に下を。念のため頭を引っ込めて、ざりざりなコンクルートにへばりつく。耳だけ注意を向けて。  男の方は、この辺りで一番高いビルから周辺を偵察したかったのかも知れない。何を探しているのかは、まあ、多分、予想がつく。僕だ。なんというか──この国は何処の街にいても必ず連中の手先がいる気がしてしまう。途方もなく手広くフランチャイズをしているコンビニみたいになってるな。 「もうこの近くにはいねーんじゃないか?」 「……ちっ。折角有力な情報かと思ったんだがなあ」 「まあヤツらが俺たちだけに情報流してるとは思えねーよ。特に今はな……」 「はあ」  こつこつ足音が近づく。こっちを目指しているという風ではない。 「悪いな夜遅くに」 「いえ。もういいのかしら」 「今の所はな」 「そう」     
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