episode.1 再会

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 と。耳に。  ……違和感のある音。いや、予想していなかっただけだ。一瞬遅れてその正体にすぐに思い当たる。  陶器のような固いものの上で小石が転がる音だ。さっき見た光景と合わせるとそう判断出来る。机の上の石の下には皿があったのかも知れない。…女子が好きそうではあるな。全く実用的ではないけれど。カラフルな石が好きなのだろう。きっと。  ただ、それにしては。……ヤケに長引いている。  コロンと皿の上に石を乗せた、ぐらいなら、すぐ音は収まるだろう。そんなに長い間転がるとも思えない。ボウリングの玉みたいに床を転がしたとしたってこんなに長く音は続かない──ように思える。  だから。その女が指先で小石を弾いて遊ぶか何かしているのか、と、思った。おはじきかビー玉みたいに──というたとえは今時の子供だと既に通じないだろうな。  それにしても長かないか。というか、いつまでいる気なんだこんな時間に。石を眺めるなら部屋でゆっくり楽しむ訳には行かないのか。  そろそろうんざりして来た。眠気との戦いにも。無断でここを寝床にする気ではいたのだけれど。それにしても。この姿勢のままで寝込んでしまうと起きた時にあちこち痛そうな気がする。     
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