0人が本棚に入れています
本棚に追加
でも背に腹は代えられない。仕方ない。
そう、諦めた直後に。
「──なるほど塔屋の上ね」
びくりとした。あからさまに体が跳ねた。
ざりざりが音を立てるぐらいに。
「……っ」
まずい。反射的に体の動きを止めようとして。自分の呼吸音がうるさいと感じてしまった。
「ヘマタイトとアパタイト。こいつらが『動く』時って、ま、そーいうことなのよね」
「……?」
立ち上がる音がした。細い椅子の足が鳴って。足音はサンダルか何かのようにぺたぺたしている。
「私の所にいるヘマタイト──赤鉄鉱は血に反応する。直接的にね。パワーストーンなんてお守りみたいに用いられる時はもっと『健全』なんだけど、こいつはちょっと…どちらかと言うと血に飢えてる危ないヤツみたいな性格だから」
明らかにこっちに向かって喋っていた。
バレて、いたのか──いつから。どうする気だ。あいつらを呼び戻す気はなさそうだけれど。
動けない。相手がどう出るのかまるで読めない。
というかそもそも誰だ。直接顔を合わせてはいないはずだ。それでも、こっちの正体を知っているのか?
最初のコメントを投稿しよう!