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『お・ま・え・を・こ・ろ・す』
その瞬間、ギュッと心臓を掴まれた心地になった。
いや、違う。
首を絞められている。ほ、本から手が突き出しているではないか。
うわっ、やめてくれ。
突然、髪の長い女の顔が飛び出してきた。長い髪で顔はよくわからないが口元だけが見えている。口角が上がっていく。笑っているのか。
うっ。締め付けが強くなっていく。
俺は殺されるのか。なぜ、どうして。何か悪いことでもしたというのか。
く、苦しい。息ができない。意識も朦朧としてくる。
俺は本に殺されてしまうのだろうか。
この本は呪われた本だ。ふと本を貸してくれた女の子の顔が浮かんだ。
あの子は俺のことを怨んでいたのだろうか。まさか、そんな……。
あっ、女の髪の毛が風に揺れて顔が露わになった。同僚の女の子の顔だ。背筋に悪寒が走る。
逃げたくても動くことができない。助けてくれの声も出せない。目で訴えても目の前の女の子は表情を変えることもない。こいつは生霊ってやつか。
もうダメかもしれない。霞む目を女の子の顔に向けていると口が動いている気がした。いったい何を言っているのだろう。耳が遠くなってしまったのだろうか。
そう思っていると女の子の顔になにやら文字が浮かんできた。
『あなたは私のもの』と。
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