第1章 旅立ち

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ルトの里を出る時、次に行く場所の候補は他にいくつかあったが、ポダ・イスカに決めたのは、シオナの巫女体質を確認するのに、有力過ぎる神殿を避ける為だった。 彼女を知れば、適性や相性も考えずにその神殿が囲い込みをしてくる可能性が高い。 それが、有力神殿であったりすると、スセンでも手を出し辛くなってしまう。 岩の神メドクメンティの神殿ならばと思ったのだが、実際には行ったことのない神殿で、やや不安も残る。 「あんまり聞いたことない神様ですよね?」 カラトがそう言うのも無理はない。 メドクメンティ神殿は、岩や石に囲まれた土地やその産出・加工を行う土地に多くが建立されている。 数の多い神殿ではないが、彼の神殿のある土地では絶大な権力を有していることも多い。 ポダ・イスカもその例に漏れない。 シオナにとって吉と出るか凶と出るか。 「ポダ・イスカでは有力な神殿だ。実際の巫女に会わせてもらえるかもしれないしな。シオナにはいいことだろう。」 その言葉にカラトもシオナも納得したようだった。 疲れが出てきた様子の二人を見て、スセンは足を緩めた。 今日はこの辺りで野宿の準備を始めた方がいいだろう。 「カラト、シオナ、今日はここまでにするぞ。」 声を掛けると、二人が驚いたように振り返った。 「カラトは火を起こす準備をしろ。シオナはその辺に何か食べれるものがないか探してくれ、俺が見える範囲で余り遠くにいかないようにな。」 二人に指示を出すと、スセンは近くに生えている木を利用して、風除けの簡単な幕を張る。 商隊などが利用する天幕などとは比べ物にならない程頼りないものだが、無いよりはましだ。 枯れ枝を抱えて戻ってきたカラトと火を起こしていると、シオナがきのこと椎の実のような木の実と野草を何種類か上着に包んで持ち帰ってきた。 シオナは、ルトの里で代々の司祭の蔵書から、意外な程に様々なことを学んでいたようで、薬草や植物についての知識がある。 お陰で、道中の食料調達に得難い人員になった。 穀類は炊いてから軽く叩いて干した米や、雑穀を引いて水で固めて焼いたものなど、日持ちがするものを買って持ってきたが、重くなることと嵩張ることを考えると最低限しか持って歩けず、腹を満たす為には道中で小まめに調達するしかないのだ。 スセンはシオナの持ち帰った食材を眺めて、荷物から鍋を取り出した。
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