2.裏切り

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 これが分離した細胞から人間を再構成する技術が無かった時代だったら、ばらした後の細胞が全て生きていたとしても、その人間はばらされた時点で人間としては既に死んだものと判断されただろうね。人間が単なる細胞の塊ではなく、細胞同士のネットワークによって成り立っている存在である以上、そのネットワークが分断された時点でもう人間は死ぬのだと考えるのは自然なことだ。でも再構成技術のある現代では、ばらされただけならその時点ではまだ助かる可能性がある。誰かが細胞を殺すのを止めに入れば、一命を取り留められるわけだからね。じゃあやっぱりばらされただけでは死んではいないのだろうか? もし幽霊を観測する技術が無ければ、これは哲学の問題とするしかなかっただろう。しかし幸いにして今の私達には、そのいずれの時点で人間として死ぬのかを確認する術がある」  博士はここで一呼吸おき、にやりと笑った。 「――そう、幽霊をいずれの時点、地点で観測できるかを調べることによってね」
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