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「しかしね、体は元通りでも、霊魂がどうなのかについては、今まで分かっていなかったんだ」
どうやら、霊学などという一見無関係に思える分野の権威である博士に声がかかった理由は、そのあたりにあるらしい。
「でも、それはどうしようもないのではないですか。そもそも生きた人間の中の霊魂を観測すること自体できないわけですし」
「そう、どうしようもなかった。これまではね。しかしね、実はついこの前、私は生体内の霊魂を観測できる装置の開発に成功したんだよ。まだ一般には未発表だけどね」
「凄いじゃないですか!」
僕は素直に感嘆した。世界で初めて死霊を観測する技術を開発しただけでも十分凄いのに、その上、生きた人間の中の霊魂まで観測できるようにするとは。幼い頃はよく分かっていなかったが、やっぱりこの人は本物の天才だ。
「……今の話を聞いて、君は怖くはないのかな?」
博士は唐突に妙なことを尋ねてきた。
「何がです?」
「君がこれから受ける処置が君の霊魂にどのような影響を与えるかは、実際のところ未だ不明瞭と言って良いんだよ。なんだったら、今からでもこの同意書は破ってしまって、処置の話は無かったことにしても良い」
「いえ、大丈夫です。やりますよ。本当に危険性が高いなら、博士は僕にこの話を持ってこなかったと思いますし、それに……やっぱりお金は必要ですからね」
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