1.被験者

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「では、今から処置室に案内するよ。さっきは君の覚悟を確認するために脅すようなことを言ったけど、実際のところは、そこまで心配する必要は無いんだ。過去に分離保存・再構成処置を受けた人達の霊魂状態も既にチェックしてみたけれど、処置を受けていない人間との違いは個人差の範囲内だったからね。君に今回被験者になってもらうのは、念のために同一の人間でも処置の前後で霊魂状態に差が無いということを確認しておくという程度の意味合いなのさ」  そう言って身を翻し、廊下を進む博士の後を、僕はついていった。ついさっき、心の中に生まれた不安を打ち消しながら。  けれど僕は、その不安ともっと真剣に向き合うべきだった。  一見しただけではいつもと変わらない博士の微笑に不穏なものを感じた自分の勘を、もっと信じるべきだったのだ。
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