2.裏切り

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「え、ちょっと博士、いったい何を言ってるんですか……?」  きっと今のは、ただの悪ふざけなのだろう。この人はたまにそういう大人げないことをするのだ。しかし冗談にしても、ちょっと悪趣味すぎやしないだろうか。 「そういえば、生体内の霊魂を観測できる装置が作れたってさっき君には言ったよね。あれね、実は嘘なんだよ。本当はそんなものはできちゃいないのさ。生きた人間の中の霊魂の観測は、今でも不可能なままなんだよ」 「待ってください、じゃあいったいこの実験は何のために……?」  分離保存・再構成処置によって霊魂の状態に影響が出るかどうかを調べるというのが、この実験の目的だったはずだ。もしも生きている人間の中の霊魂が今でも観測不能だというのなら、影響を見ることなんて当然できはしない。話が前提から崩れるのだ。 「この実験を何のためにやるのかって? そうだね。それじゃあ聞くけど、君はこの後、どの時点で死ぬんだと思う?」  質問の意味が分からずただただ絶句していると、博士は今度はこんな言葉を投げかけてきた。     
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