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「……いいんだよ。白木、これお前のだろう。……ちゃんとしまっておけよ」
疲れ果てたような声だった。そうして吾輩はポーンと放られる。ウニャー、と叫びながら吾輩は宙を舞う。と、その時しゃらん、と涼やかな音を立てて吾輩のりぼんが落ちる。それを掴もうとして、竹本殿が手を伸ばすのが見えた。うにゃ?吾輩は視界が安定しないながらも竹本殿が傾ぐのを見た。そこで吾輩は気がついた。竹本殿はただ渡そうとしただけなのだ。この至近距離で吾輩を投げたのは、結果的にそうなってしまったのだ。倒れ込みながらも吾輩を落とさないように、と。そういえばこの御仁、吾輩のことを何度も拾ってくれたな……。
「先輩!」
涼香殿の高い声。走り寄る足音。吾輩は最後までその光景を見ることが出来なかった。なぜなら抱きとめてくれる人がいなかったのだ。床に強かに打ち付けられて吾輩は意識を失った。
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