吾輩はニャーである。名前はまだ無い。

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あ、痛。 竹本が不意に声を上げる。 「大丈夫ですか?」 「ん、ああ。軽かったからな」 その手にいたのは彼と同じ名前のぬいぐるみだ。相変わらず顔色が悪い。それに引換え竹本の顔色はかなり良かった。涼香と付き合うようになってその食生活は大幅に改善された。睡眠時間も増えた。……全てはコイツのおかげだ。ふっと竹本は笑う。 「どうかしましたか?」 「いいや、何でもねえよ。……大切にしてんだな」 「もちろん!……あれ、この子リボンが」 何処に行ったんだろう、と首を捻る涼香に何でもなく、さあな、と竹本は笑う。でも竹本はそれが何処にあるのか知っている。……言わないけど。 だって、あの赤いリボンが二人を結びつけてくれたんだから。 手放してなんて、やらない。
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