吾輩はニャーである。名前はまだ無い。

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あれから数日がたった。吾輩は若草色のそふぁーの上で主殿、白木涼香殿の帰りをのんびりと待っていた。涼香殿はとてもいい主殿であった。持っているぬいぐるみ達へ毎日おはよう、や行ってきます、を言ってくれるし、休みの日にはお天道様の元で干してくれる。その時吾輩たちを挟む洗濯ばさみなるものは少々痛いが干されるのは気持ちが良いものだった。しかもだ、涼香殿はぬいぐるみ達にりぼんやべすとを作ってくれるというのだ。かく言う吾輩も先日鈴のついたりぼんを首にかけてもらった。なんと嬉しかったことか。吾輩何が何でも涼香殿に付いていくと決めた。 『こーくん』 吾輩は呼ばれて振り返る。そこには涼香殿のぬいぐるみたちの中でも一番の古株だと言うみりー殿が涼香殿の寝床を整えているところだった。整えているとは言っても皺を少々伸ばす程度しか出来ないのだが。 『そっちはおわった?すーちゃんのへあぴん見つかった?』 『うむ、あった。これはどこに置いておくと良いのだ?』 『そっち。すーちゃんのかがみのとこ』 吾輩は言われた通り涼香殿の鏡台の上に見つけたへあぴんを置いた。みりー殿曰く主殿のお気に入りだった物らしい。吾輩達が可愛がってくれる涼香殿のために出来ることはこれくらいのものだ。後は話を聞いたり、添い寝したり。吾輩はここでの生活がかなり気に入っていた。しかしだ、ひとつだけ懸念していることがある。もちろん涼香殿のことに決まっているのだが。 『これですーちゃん、げんきになるかな』 『みりー殿、主殿はいつから元気がないのか?』 うーん、とふかふかの頭を抱えてみりー殿が考え込む。 『ちょっとまえから。すまほみて、ためいきついたり、ぼーっとしてて、おなべこがしたり。いままでこんなことなかった。すーちゃんとずっといっしょにいるみりーがいうんだからほんと』 『そういえば、この間はなかなか寝付けなかったみたいだったしねえ』 『それはいつの話だ、とりふ殿』 『ト、リュ、フ、なんだけど。……そうさねえ、ああ、確かあの日はアンタがここに来た日だ』 『吾輩?』
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