吾輩はニャーである。名前はまだ無い。

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主殿は吾輩を机の上に置くとよしよしと撫でた。そしてもう一度ただいま、と微笑む。 「今日も疲れたな……あ、そうだ聞いて聞いて。私、今度先輩と同じ企画に参加出来ることになったの!すごく嬉しかったんだ」 「先輩の足を引っ張らないように頑張らないと……」 「先輩は資料作るのがすっごく上手なの!私もあんな風に作れるようになりたいなあ」 「最近あんまり寝れてないのかな……心配」 「先輩はねすごく優しいんだ。失敗しちゃった時も気にすんな、って。……あなたもくれたし」 ね、素敵な人だよね。ひとつ欠伸をして主殿はそれっきり眠って仕舞われた。 吾輩は人の心の機敏にそんなに聡くはない。知っている人間は涼香殿と竹本殿だけだからだ。しかもほんの少々だ。けれども分かってしまった。涼香殿は竹本殿に恋をしておられる。本音としては趣味が悪いと言いたい。吾輩を不細工と言った恨みは忘れぬがな。でも、だ。 『────上手くゆくと良いなあ。だってこんなにも良い主殿なのだから』
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