吾輩はニャーである。名前はまだ無い。

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「……ただいま」 あくる日、帰ってきた涼香殿は元気がなかった。吾輩たちはそれを心配する。何があったのだろう。こういう時に吾輩たちぬいぐるみは無力だ。何もできない。 涼香殿は吾輩たちをその細い腕に抱くとぼろぼろと涙を零し始めた。涙が吾輩たちの柔らかな身体を濡らす。水が苦手な吾輩たちは身じろぎもせずただその涙に濡れる。今吾輩たちに出来るのは彼女の涙を拭うことだけだったから。 「……先輩といっしょに頑張ったのに」 『白木くん、いい出来だったよ。……ただねえ、』 『竹本くん、ねえ。……鼻持ちならないんだよ。君みたいに可愛げもないし。……あ、そうだ。この企画白木くんだけでやらないかい?うん、それがいい』 『でも、これは先輩と……』 『大丈夫だ。白木くん、期待してるよ』 「やだよ、いや、やなの……。先輩といっしょにやりたいの……!」 悲痛な声だった。吾輩は情けないことに何にもできない。ぬいぐるみであるこの身が恨めしい。 『────どうして吾輩たちはぬいぐるみなんだろう』
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